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アウラの森芸術舎が伊豆にオープン

更新日:2023年6月7日




設立の趣旨「大地の魔術師たち」展、白石顕二氏を追って


ここ数十年の社会的潮流として国連が掲げる社会開発目標 (SDGs)のうち、16番目の目標である「平和と公正をすべての人に」では、「誰一人取り残さない」というインクルーシブが強調されます。では、アートや音楽の世界ではどうでしょうか。1989年、ポンピドーセンターでは、非西洋美術を網羅した「大地の魔術師たち」展が開催され、それは当時として画期的なイベントでした。アウラの森芸術舎にあるシプリアン・トクダバもそのアーティストの一人で、白石顕二氏 (1946-2005) の尽力によりジョージ・リランガやジャファリ・アウシ、ムクーラ(ティンガ・ティンガ派)を含め、多くのアーティストたちより直接作品を入手された作品の一つです。現在でも西洋美術中心主義は否定できず、30年以上前に「100パーセントの展覧会が80パーセントの地球を無視する」という問題を修正しようとしたことは、極めて実験的な試みだったと思料します。本展の想いを受け継ぎ、弊社のミッションは"Enhance Humanity through Art" (アートを通じて人間性を高める)、そしてビジョンを "Diverse and inclusive world where all forms of art find their place in the sun"(すべてのアートが太陽の下で場所を見つけることができる多様で包括的な世界)といたしました。2004年から始まった「アフリカ・リミックス」展は、パリ、ロンドン、東京の森美術館を巡回し、25カ国から80人のアーティストが展示され、その中には弊舎も作品を収集しているジョージ・リランガ、トクダバも含まれています。弊舎のコレクションは、白石顕二氏のアフリカ美術コレクションなくしては実現しなかったでしょう。突然の死を迎えた白石顕二氏を偲び、同氏のアフリカの芸術、映画、音楽への献身と情熱に対して、ロンドンの映画界の重鎮であるサー・ジョン・アコムフラーからオープニングのために送られたメッセージの一部を紹介いたします。


Kenji Shiraishi was a great man, a pioneer and a visionary figure who foresaw the coming dawn of Africa’s art and its culture. I will never forget the many wonderful conversations we had on Lilanga and Tingatinga, the many books he gave me on the subject, and his deeply held conviction that the magnificence of Africa’s art forms will one day find their place in the sun.


As the only Japanese figure on the African cinema and Art scenes over many decades, Kenji Shiraishi was a trailblazer who taught us all something about the importance of being original, having principles and convictions. And following your dreams and passions.



白石顕二氏とユッスー・ンドゥール (c) Kenji Shiraishi



私たちの活動内容


◆ アフリカンアート・コレクション展示

白石顕二(1946-2005)アフリカコレクションは約1,000点の作品から構成され、現代アフリカ美術はもとより、立体造形(仮面・彫刻・工芸)からテキスタイル、装身具と広範囲に及び、それ以外に書籍や映像等の資料を総合的に網羅しています。弊舎ではそのコレクションからお譲りいただいた約200点のうち、約40点の作品群を常時展示しているほか、映画関係を含むアフリカ文化書籍・資料を所蔵しております。本物の美術品でしか感じることのできないアウラを放つアフリカの精神性を体感していただけます


◆ グリオ音楽演奏

グリオは西アフリカを中心とする歴史伝達者であり、マリ帝国(1226-1670)以前より王族専任の世襲制音楽集団。その膨大な知識は王より重用され、顧問としての役割を果たしました。グリオの楽器の一つであるコラの生い立ちは神秘的であり神と選ばれた人間により製作されたと伝えられ、21の弦から奏でられる響きはハープに類似します。グリオたちの奏でる癒しの音楽をお楽しみいただけます


◆ Africulture Times/コレクションによる情報発信、 レクチャー開催等

アウラの森芸術舎を発行元とするAfriculture Times/Collection では、ニュース、知識人よりアフリカ文化を語っていただくコラム、所蔵書籍紹介、弊舎活動をお届けし、所蔵コレクションを紹介いたします。また、アフリカ文化に関する講義などを企画・実施いたします。


オープニング・イベントは、次のような内容で行われました。



「リランガ、トクダグバ、ルーシーのコスモス」展


                     展示の様子、トクダバ、ルーシー Courtesy of R. Lewsey


オープニング・イベントは2022年4月29日、伊豆の山間部にある現代の利便性とはかけ離れた普通の平屋で行われました。ジョージ・リランガが日本でのデモンストレーション中に描いた銅板キャンバスの作品は日本の障子とよくマッチし、シプリアン・トクダグバのYNANは弊舎の守護神として鎮座します。英国人アーティストであるリチャード・ルーシーの彫刻「Ghost」はアフリカ美術作品たちのパーティに加わっていただきました。 当日、アウラの森芸術舎を訪れた30名の方々の中にはアフリカのアート作品を初めて見る方もいらっしゃり特別な体験となったようです。


ジョージ・リランガの描くシェターニ


イベントの前半は、東京電機大学名誉教授の石塚正英氏に『ジョージ・リランガの描くシェターニ』をご講義いただきました。哲学的観点から、シェターニを妖怪(日本)、プシュケー(西洋)と比較。「シェターニは人間世界と異界の生き物にある中間存在。リランガは夢の中でイメージがわき、それを描くという究極の感性文化で、"L'existence precede L'essence”を唱えた実存主義のサルトルを体現。リランガのシェターニは、古代ギリシャ哲学者たちが捉えどころのないものとして思惑していた「魂(プシュケー)」の現実態であり、まさに天才画家と言える。」リランガと白石氏は魂の友であり、白石氏が亡くなった5日後にリランガも亡くなっています。



リランガ制作デモストレションの様子 (c) Kenji Shiraishi



コラ・グリオ カラモ・シソコ氏


後半、セネガルのカラモ・シソコ氏にコラの演奏をしていただきました。イスラム教義上ラマダン中であり、特に4月29日(金)はLeilat el kadr (Night of power)というコーランが表された特別な日でした。カラモ・シソコ氏はマリ帝国以前からつながるグリオのマンディンゴ出身。セネガルを代表するコラ・グリオで叔父のサンジュール・シソコ氏は二度来日しています。また、1983年、白石顕二氏もダカールでマリ帝国創始者ソンジャタの歴史研究家D.T.ニアヌと話し、その後、サンジュール・シソコ氏にインタビューをしています。グリオは古くは王族の語り部であり、世襲制音楽集団。その膨大な情報は図書館に値すると言われ、王の顧問的な役割を果たしました。そのうち、コラという楽器はハープのような響きを持ち、平和の歌、愛の歌、英雄の歌と繊細なアフリカン・ハープの響きは新しい驚きでした。グリオは格別であり、アフリカが誇る無形文化財産です。


              カラモ・シソコ氏とコラ Courtesy of Karamo Cissokho


最後に

お料理は渋谷のLos Barbadosのアフリカ料理とお祝いにいただいたアフリカン・フラワー (ななさんとSophie Créaide Inc.)によりこのオープニング・イベントがより豊かなひと時となりました。Hapahapa Gallery、白石富美子氏、家族に感謝。





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